2017年12月3日日曜日

競争市場メカニズムの外

競争市場メカニズムは行き詰まりつつあると強く思うのです。日本を離れる際に思ったのは、行き過ぎた効率性重視によって社会全体が疲弊している、ということでした。オーストラリアも似たようなものです。日本の後を追っかけています。ただ、人間性は辛うじて残っていますし、競争市場メカニズムから離れようとする個人の動きもあるのです。

オーストラリアでは、レストランでも、スーパーマーケットでも、コンビニでも、店員さんとお客さんが目を合わせますし、笑顔を交わすことも少なくありません。確かに、国籍だとか、人種だとか、色々違いはあるけれども、基本的には同じ人間同士なんだという感覚を持つことができます。

他方、日本の店員さんを思い出すとき、疲れ切った人間の印象、または、まるでロボットを相手にしているような印象が残っています。お客さんの目を見ることもなく、俯いたままボソボソと決まり文句を吐き捨てるように呟く。もしくは、どんなお客さんに対しても同じ作り笑顔と同じ角度のお辞儀を行う。

実は今、キャンベラの中で引越し先が決まったところです。先日、ある個人オーナーから電話があった際、普通の不動産屋さんとはちょっと雰囲気が違うので、僕は自分の事情を詳しく説明しました。そのオーナーが紹介してくれたアパート、というより建築物を見たとき、僕は感動しました。古いのですが、歴史があり、緑いっぱいの周りの環境と調和していて、本当に美しいのです。涙が出そうになりました。

そのオーナーと部屋の中や外でしばらく話をしました。オーナーが最後に、「この物件を市場に出したくないんですよ」とボソッとこぼしました。僕は「気持ちがわかります」と相槌を打ちました。その物件の住所も写真もウェブ上に載せてないのです。部屋も1〜2人にしか見せていないと思います。価格は相場より明らかに低いです。相対取引です。そのオーナーは競争市場メカニズムの外で活動しているのです。

その会話以降、競争市場メカニズムの限界とその外での活動について考え始めました。これからしばらく考え続けます。新居の写真を掲載できませんが、キャンベラに対する気持ちが180度変わるくらいのインパクトがある建築物です。何より、オーストラリア国民でもない僕を受け入れてくれたオーナーに感謝の気持ちでいっぱいです。

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